今回は、日本在住20年超の台湾出身の林さんにお話を伺いました。

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(編集部)

お時間を頂きありがとうございます。はじめに、林さんが日本に来るまでの話を聞かせてください。

(林さん[以下、林と略])

私は台湾の、現在の新北市で生まれました。父は若い時に願掛けをしていたため、朝食のみ素食でしたが、母も私も素食ではありませんでした。若い時は、自分が素食になるとは全く思っていませんでした。父は仏教に、母は道教に帰依している、宗教的な家庭でした。

台湾で高校を卒業した後、台湾の旅行会社でアルバイトをしていたのですが、その関係で航空会社などに行く機会が多くありました。航空会社では、日本語や英語が話せる人が多く、自分も日本に行って日本語を勉強したいと思いました。卒業から1年後に日本に来て、はじめ日本語学校に通った後に短大に入学し、以後はずっとビジネスの道に入りました。

(編集部)

全く素食ではなかった林さんが、素食になるキッカケは何だったのですか?

(林)

2011年の東日本大震災と、ボランティア経験が大きく影響しています。少し長くなりますがお伝えします。

長らく東京でビジネスをしてきましたが、ビジネスが手から離れた後に、ずっと興味があった学習をすべく大学に通っていました。地震があった3月11日の少し前に、台湾から東京に戻ってきて、大学の卒業式のために関西に行く予定だったので、新幹線に乗れず、バスで関西に向かいました。行く途中の街は真っ暗で普通の状態でないことがすぐに分かりました。

余震が続く中、関西に残るべきか、東京に戻るべきか、それとも台湾に行こうかと迷いました。台湾に住む母と電話で話した結果、台湾の仏教団体である「慈済基金会(以下、慈済 )」が被災地でボランティア活動をしているので、東京の慈済に募金を持って行くのと、ボランティアの参加を申し込んでみることにしました。

(編集部)

ボランティアを運営する慈済とはどのような団体ですか?

(林)

台湾ではとても大きな仏教団体、そして慈善活動を行う団体です。東日本大震災の時には、50億円を39か国から集めて、ボランティアを通じて、被災した方に独自に当座の義援金を配布する活動をしました。日本の団体でも、被災者のためにこれだけ巨額の現金を、被災地で配った団体はないはずです。慈済のボランティアは活動費用、食料、交通費などは全て自分持ちです。

(編集部)

林さんはボランティアではどのような活動をされたのですか?

(林)

まず、義援金を配布するために、家族の大きさなどによって、現金を3万円、5万円、7万円に分けて封筒に入れ、それを段ボールに詰めて現地に運びました。私の担当は、義援金を配布するための名簿のチェックでした。初めてのボランティアなので、どのように人を慰めてよいかもわかりませんでした。義援金を受け取るために並んでいる人には、会社が流されてしまった社長さんもいれば、家族を失った方もいます。同情の気持ちとかは心にあるのですが、言葉が出ないんですね。変な言葉をかけると、被災者の方が傷つけてしまうと思って。悲しすぎる光景だけど、感情を必死で抑えて「泣いてはいけない」と思いました。

同時に、1分、2分の違いで生き別れになった人たちを見て、「愛する人と一緒にいられる時間は短い」と改めて思いました。私は、高校卒業後、すぐに日本に来たので、両親と一緒にいた時間は短かったので、台湾で両親と一緒に過ごしたいと思いました。台湾で、両親とゆっくりと時間を過ごした時に、「親孝行と善行は待てない」と改めて悟り、「いつか何かしたい」ではなく、「今の時間を大切に」「人との出会いを大切にしなければ」と思い至りました。被災地で人を助けることを通じ、多くを教えてもらいました。

(編集部)

震災ボランティアに参加したことによる心境の変化が、素食にもつながるんですね。

(林)

台湾の仏教団体やお坊さんの多くは、素食を推奨していますが、慈済も同様に素食を推奨しています。ボランティアに参加した当時は、自分が素食になると思ったことはありませんでしたが、慈済の教えに共感したことから、両親と会って台湾から日本に戻った後に慈済の正式なメンバーになり、同時に素食になりました。私は完全なベジタリアン(ビーガン)ではなく、卵、乳製品、五葷は食べます。肉と魚は食べません。

(編集部)

素食者として日本で暮らす面で不便な点はありますか?

(林)

ビジネスをしていた頃は外食が多かったのですが、素食になってからは外食が減りました。日本は素食のレストランが少ないので、レストランに入って食べられるものがないこともよくあります。また、素食になると痩せると思う方が多いのですが、実は太る方も多いんです。私もそうでした。肉を食べない代わりに、炭水化物を多く食べるようになると、体重が増えてしまうのです。ベジタリアン用ビザ、スパゲティ、パンなどです。

おにぎりは、具が何か分からないので基本食べない、麺類はだしがカツオであることが多いので、こちらも食べられません。野菜も、調理方法によっては、肉や魚、または肉や魚が入った調味料が入っているため、外食では食べないです。

素食になって食生活と、それに伴う人間関係に苦労しました。友達と一緒に入ったレストランで食べるものがない、玉ねぎが入っているからサラダを食べない、といったことを続けていると、人との付き合いが減ってきます。台湾に比べて、日本では素食でいることは難しいです(よって、私は卵、乳製品、五葷 は食べるようにしました)。素食でもより良い食生活を送りたいと思い、慈済がやっている料理教室に通いました。素食の料理は非常に面白く、もっと学びたくなって台湾で素食の調理師免許の資格を取得しました。

(編集部)

最後に、林さんの今後についてお教えください。

(林)

日本で、素食のレストランを開いたり、料理教室を開いたりして、素食の素晴らしさを広げていきたいと思います。ビジネスから離れ、ボランティアの活動をして、素食になって、新たな人生の目標を見つけたように思います。

(編集部)
本日はありがとうございました。